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薬事情報センターより

 

ノロウイルス
ノロウイルス感染症
予防の方法
消 毒
食中毒とは

はじめに

04 02  近年、冬季を中心にノロウイルスなどによる感染性胃腸炎が、高齢者施設だけでなく宿泊施設など様々な場所で問題となっています。事態を受けた厚生労働省は、増加する感染性胃腸炎の発生・まん延防止策の徹底事項を各都道府県などへ通知し、同省ホームページには、「ノロウイルス食中毒の予防に関するQ&A」を開設しています。(→参照;参考文献及びリンク)
徳島県内では、2005年にサルモネラ菌やカンピロバクターによる細菌性胃腸炎やロタウイルスによる感染性胃腸炎の他に、ノロウイルスを原因とする感染性胃腸炎が料理店や高齢者施設などで発生しました。今回は、2005年に掲載していたものを少しばかり修正し、ご参考までに消毒剤をご紹介いたします。

ノロウイルス

ノロウイルスの検出の経緯は、1968年にさかのぼります。
1968年に米国のオハイオ州ノーウォークという町の小学校で集団発生した急性胃腸炎の患者のふん便からウイルスが検出され、発見された土地の名前を冠してノーウォークウイルスと呼ばれました。
1972年に電子顕微鏡下でその形態が明らかにされ、このウイルスがウイルスの中でも小さく、球形をしていたことから「小型球形ウイルス(SRSV:Small Round Structured Virus)」の一種と考えられました。
その後、非細菌性急性胃腸炎の患者からノーウォークウイルスに似た小型球形ウイルスが次々と発見されたため、一時的にノーウォークウイルスあるいはノーウォーク様ウイルス"Norwalk-like viruses"、あるいはこれらを総称して「小型球形ウイルス」と呼称していました。
ウイルスの遺伝子が詳しく調べられると、非細菌性急性胃腸炎をおこす「小型球形ウイルス」には2種類あり、その殆どは、いままでノーウォーク様ウイルスと呼ばれていたウイルスであることが判明しました。
2002年8月、国際ウイルス学会で正式に「ノロウイルス」と命名され、もうひとつは「サポウイルス」と呼ぶことになりました。

04 01ノロウイルスの電子顕微鏡像
(埼玉県衛生研究所篠原先生撮影)
直径は約38ナノメータです。
ノロウイルスは、形態的特徴やゲノムの構造から、ネコカリシウイルスに代表されるベジウイルスに近縁なウイルスであることが明らかにされています。
現在、ノロウイルスに属するウイルスはGenogroup(G)とGenogroup (G)の2つの遺伝子群 に分類され、さらにそれぞれ14種類と17種類の遺伝子型(genotype)に分類されています。
現時点でノロウイルスは、ヒト以外にウイルスの増殖が確認された動物はなく、また、培養細胞を用いても増殖させることができないといわれており、研究が推進されています。

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ノロウイルスによる感染性胃腸炎

ノロウイルスは、非常に感染力が強いウイルスで、少量でも小腸で増殖し、感染性胃腸炎を発症します。乳児から成人に幅広く感染しますが、主に小児で流行する場合もあることが明らかになってきています。

<感染経路>
感染経路はほとんどが経口感染です。しかし、ヒト同士の接触する機会が多い場所では、ウイルスを含んだもの(乾燥した嘔吐物や下痢便のかけら)や粉塵が舞い上がると、居合わせたヒトが吸い込んでしまうとか、何かの方法で口に入り感染することに注意が必要です。

(1) 汚染されていた貝類を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合
 発症の原因となる食品は、主に生の2枚貝(カキ、大アサリ、シジミ、ハマグリなど)あるいは、十分に加熱処理されていない食品とされています。二枚貝は、大量 の海水を取り込み、プランクトンなどを食餌としますが、ウイルスも取り込まれる場合があります。日本人は、二枚貝を冬季によく生食するため、ノロウイルスによる感染性胃腸炎の発生も多いと考えられて います。ノロウイルスに汚染されたカキを例にとると、ウイルスは、内臓の中でも中腸腺と呼ばれる黒褐色をした部分に蓄積されます。これが、ヒトの小腸で増殖して急性胃腸炎を引き起こします。
【注意】 ノロウイルスによる感染性胃腸炎は、カキなどの二枚貝を含まない食品が原因であったり、原因食品を特定できない事例もあります。感染性胃腸炎の流行時期は、日常の食事日誌をつけるとか、どういう食品を食べたかわかるように食品についているラベルを保管しておくなどの工夫をして、各関係施設で相談する必要ができた時に「いつ、どこで、何を食べたか」を伝えられることも肝要 かと存じます。
(2) 感染している食品取扱従事者によって汚染された食品を摂取した場合
(3) 患者のふん便や吐ぶつから二次感染した場合
 感染経路はほとんどが経口感染ですが、ヒト同士の接触する機会が多い場所では、ウイルスを含む有機物(乾燥した嘔吐物や下痢便のかけら)や粉塵が舞い上がると、居合わせたヒトが吸い込んでしまうとか、何かの方法で口に入り感染することに注意が必要です。
(4) ヒトからヒトへの直接感染

 <主な症状>

吐き気,嘔吐,下痢ときに、腹痛、頭痛、発熱、悪寒、筋痛、咽頭痛などを伴うこともあります。
通常、これら症状が1~2日続いた後、治癒し、後遺症もないとされています。
また、感染しても発症しない場合や軽い風邪のような症状の場合もあります。
まれに重症化する例もあり、高齢者や免疫力の低下した乳児では死亡例も報告されています。

<潜伏期間(感染から発症までの時間)>
24~48時間とされています。
しかし、ウイルスは症状が回復した後も10~14日間ほど患者の便中に排出されることがあるため、二次感染に注意が必要です。

<発生時期>
冬季に多いといわれていますが、それ以外の季節でもみられます。

 

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予防の方法
基本的には、手洗いとうがいの励行です。

<調理>
食品の中心温度85℃以上で1分間以上の加熱を行えば、感染性はなくなるとされています。

<調理台や調理器具など>
ノロウイルスの失活化には、エタノールや逆性石鹸はあまり効果がありません。
ノロウイルスを完全に失活化する方法には、次亜塩素酸ナトリウムや加熱があります。
(1) 調理器具などは洗剤などを使用し十分に洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200ppm)で浸すように拭くことでウイルスを失活化できます。
(2) まな板、包丁、へら、食器、ふきん、タオル等は熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱が有効です。

<手洗い>
(1) 常に爪を短く切って、指輪等をはずし、石けんを十分泡立て、ブラシなどを使用して手指を洗浄します。
(2) すすぎは温水による流水で十分に行います。
(3) 石けん自体にはノロウイルスを直接失活化する効果はありませんが、手の脂肪等の汚れを落とすことにより、ウイルスを手指から剥がれやすくする効果があります。

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消 毒

基本的に・・・

■十分な加熱をする(85度、1分以上)。
(ノロウイルスの失活化の温度と時間については、現時点においてこのウイルスを培養細胞で増やす手法が確立していないため、正確な数値はありませんが、同じようなウイルスから推定すると、食品の中心温度85℃以上で1分間以上の加熱を行えば、感染性はなくなるとされています。)

■塩素系消毒剤で処理する。
吐物や糞便は、乾燥しないうちに速やかに処理する必要があります。

 

表1.次亜塩素酸ナトリウム溶液の希釈方法についての参考資料
【注意】専門家の指導のもと、薬剤の『使用上の注意』をよく読んでからご使用くださいませ。

<表1 次亜塩素酸ナトリウム溶液の希釈方法>

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<表2 消毒剤の使用一覧表>

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消毒対象物 消毒剤 対象微生物
環境  器具 人体    血液・体液・排泄物などの有機物 一般細菌 MRSA 緑膿菌やセパシアなど 結核菌 芽胞 真菌 ウイルス
床・壁・病室など
ドアノブ・手摺など  金属器具 非金属器具 手指 皮膚 創傷部位 粘膜 糸状真菌 酵母真菌 中間サイズ   ※注1 小型サイズ   ※注2 HIV HBV・HCV※注3
× × × × × × × アルデヒド系 グルタラール
× × × × × ホルマリン
塩素系 次亜塩素酸ナトリウム
× × × × アルコール系 エタノール × ×
× × × × イソプロパノール × × ×
× × × ×

エタノール・
イソプロパノール配合剤

× ×
× × × × × × × × 第4アンモニウム塩系 ウエルパス®(配合剤) × ×
× 塩化ベンザルコニウム
塩化ベンゼトニウム
× × × × ×
× × ビグアナイド系 グルコン酸クロルヘキシジン × × × × ×
× × × × × × ヨウ素系 ヨードチンキ・希ヨードチンキ ×
× × × × × ポビドンヨード ×
× × フェノール系 フェノール × × × ×
× クレゾール石ケン液 × × × ×
× × × × × × × 色素系 アクリノール × × × × × × ×
× 両性界面活性剤系 塩酸アルキルジアミノ
エチルグリシン
× × × ×
× × × × × × × 酵素系洗浄剤

蛋白分解酵素洗浄剤
(ステリザイム®)

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〇 ・・・ 使用可
△ ・・・ 注意して使用
× ・・・ 使用不適
☆ ・・・ 効能・効果はないが、
     使用している報告がある

 

〇 ・・・ 有効
△ ・・・ 十分な効果が得られない
     ことがある
× ・・・ 無効
- ・・・ 該当しない

【ウイルスについて】
※注1 脂質を含む中間サイズ:インフルエンザウイルス,ヘルペスウイルスなど
※注2 脂質を含まない小型サイズ:アデノウイルス,コクサッキーウイルス,ロタウイルスなど
     (ノロウイルスもこのタイプに含まれますが、アルコール消毒に関しては上記ウイルスに対するよりも効力が劣ります)
※注3 HBV・HCV:「ウイルス肝炎感染対策ガイドライン」改訂版(1995)の「消毒法」の項に記載されている
     消毒剤を○とした。

―丸石製薬資料「殺菌(滅菌・消毒)概要」より,一部改変―

使用方法などについては、医師、歯科医師、薬剤師にご相談ください。

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食中毒とは 引用文献(5)

食中毒の原因微生物には、表2に示すように国が指定する16種類の食中毒原因菌と類感染症(感染症新法で規定されているもの)の細菌性赤痢、コレラ、腸チフス・パラチフス、さらにウイルスのロタウイルスと小型球形ウイルスがあります。
食中毒菌は発症機構によって、感染侵入型感染毒素型生体外毒素型の3つに分類できます。
前2者は、細菌みずからが体内に入って食中毒を起こすもので、「感染型」と総称され、後者は、細菌の毒素によって食中毒を起こすもので、「毒素型」と総称されます。「感染型」の臨床症状は、発熱、腹痛、嘔吐、下痢などですが、「毒素型」のボツリヌス菌は複視、発語障害、呼吸障害などの神経症状がみられます。
また、腸管出血性大腸菌感染症では、溶血性尿毒症症候群と脳症には注意が必要です。
これらの病原体の発症機構、潜伏期、主な分布と感染源について表2に示しました。

 <表3 食中毒の原因微生物>

食中毒の原因微生 発症機構 主な分布 潜伏期 主な感染源
黄色ブドウ球菌 A ヒト鼻咽喉 3時間 食品全般
ボツリヌス菌 A 土壌 10~40時間 嫌気性食品(瓶,缶詰)
腸炎ビブリオ B 海産魚介類 5~20時間 海産魚介類
サルモネラ C 動物・人(腸管) 10~72時間 卵,肉
セレウス菌 B 土壌 5~24時間 肉,乳製品
ウエルシュ菌 B 土壌,動物・人(腸管) 8~24時間
下痢原性大腸菌     12~48時間  
 腸管侵入性大腸菌(EIEC) C 動物・人(腸管) 12~72時間 食品,飲料水
 (腸管)毒素原性大腸菌 B 動物・人(腸管) 12~24時間 食品,飲料水
 腸管病原性大腸菌 B 動物・人(腸管) 2~9日 食品,飲料水
 腸管出血性大腸菌(O157など) B 動物・人(腸管) 不明 食品,飲料水
 腸管凝集付着性大腸菌 B 動物・人(腸管) 12~24時間 肉,飲料水
エロモナス・ヒドロフィラ B 河川,淡水魚介類 12~24時間 河川,淡水魚介類
エロモナス・ソブリア B 河川,淡水魚介類 2~7日 河川,淡水魚介類
カンピロバクター・コリ B 動物・人(腸管) 2~7日 鶏肉,飲料水
カンピロバクター・ジェジュニ B 動物・人(腸管) 12~24時間 鶏肉,飲料水,生牛乳
プレシオモナス・シゲロイデス B 河川,淡水魚介類 5~24時間 河川,淡水魚介類
ナグビブリオ B 海産魚介類 5~24時間 海水,海産魚介類
ビブリオ・フルビアーリス B 海産魚介類 5~24時間 海水,海産魚介類
ビブリオ・ミミカス B 海産魚介類 2~5日 海水,海産魚介類
エルシニア・エンテロコリチカ C 動物・人(腸管) 1~7日 豚肉,ペット動物
細菌性赤痢 C 人(の腸管)・水系 1~3日  サラダ,飲料水
コレラ B 河川,淡水魚介類 7~14日  河川,淡水魚介類,貝類
腸チフス・パラチフス   人(腸管) 24~48時間 飲料水,肉,患者便
小型球形ウイルス(SRSV)     5~24時間 かき
ロタウイルス     12~48時間 患者便

 SRSV:Small Round Structured Virus

A:毒素型(生体外毒素型) B:感染毒素型(生体内毒素型) C:感染侵入型
病院感染対策ガイドライン 編集:国立大学医学部付属病院感染対策協議会 じほう p.171~172より

 

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kaki0612 カキは栄養源 文献(8)

 カキは、『海のミルク』とも言われ、栄養素としては、鉄、銅、亜鉛、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルを豊富に含んでいます。アミノ酸も含み、グルタミン酸やグリシン、アラニン、プロリンなどがカキの旨みを形成し、これにグリコーゲンが加わることでまろやかさが生まれるとか。カキは、産卵後にグリコーゲンの蓄積量が増え、それが秋から冬場のことらしい。

 

参考文献及びリンク

(1) 厚生労働省ホームページ「ノロウイルス食中毒の予防に関するQ&A」
   http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/12/h1208-1.html
(2) 国立感染症研究所感染症情報センター「病原微生物検出情報(月報):IASR」
   http://idsc.nih.go.jp/iasr/24/286/inx286-j.html
  感染症発生動向調査週報:「IDWR:感染症の話」
   http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k04/k04_11/k04_11.html
(3) 徳島県歯科医師会会報「徳歯会報 NO.710~717」
(4) 丸石製薬資料「殺菌消毒剤使用の手引き」
   丸石製薬ホームページhttp://www.maruishi-pharm.co.jp/
(5) 病院感染対策ガイドライン 編集:国立大学医学部付属病院感染対策協議会
   平成16年1月発行  じほう
(6) 徳島新聞 2005年1月12日,2005年1月14日
(7) 徳島県ホームページ
   http://www.pref.tokushima.jp/
(8) 日経ドラッグインフォメーション第62号2002年

サイトのご案内
厚生労働省  http://www.mhlw.go.jp/index.html
国立感染症研究所  http://www.nih.go.jp/niid/index.html
日本食品衛生協会  http://www.n-shokuei.jp/index.html