1970年代以降,フロンガスや臭化メチル(輸入農産物の薫蒸に使う薬剤)などによるオゾン層の破壊が,世界的規模の大きな問題となっています。特に,4月から10月にかけて紫外線が強くなります。
◆こんな症状ありませんか?
主な症状 | 機序 | 特徴 | 性質 |
主に日焼け様症状 ・強い浮腫性紅斑 ・水疱 ・かゆみ ・灼熱感 |
皮膚に残存する薬物またはその代謝物 ↓ 光を吸収 ↓ 反応性に富む物質に変化 ↓ 細胞を攻撃し傷害 |
薬物と光の量が必要以上であれば,誰にでも発現する。 | 光毒性反応 |
主に湿疹型皮疹 ・急性期 (紅斑,丘疹,小水疱,鱗屑) ・慢性化 (苔癬化局面形成,強いかゆみ) |
薬物またはその代謝物の光化学反応 ↓ 抗原の形成 ↓ 抗原抗体反応を誘発 |
発症には免疫が関係し,一定の潜伏期間がある。 (一般に2週間前後) |
光アレルギー性反応 |
◆光線過敏症
日光などの照射を受けた皮膚に,異常な皮膚反応を起こしてしまう疾患群です。通常,顔面,頚部,上胸部V領域,手背などの露光部位に限局して皮疹がみられます。
薬剤性のものを含め多くの光線過敏症は,主にUVA(長波長紫外線:320~400nm)が作用波長ですが,疾患によってはUVBや可視光線に起因するものもあります。
また,赤外線も時には誘発する原因となります。
<分 類> | |
(1)外因性光感受性物質によるもの | 薬剤性光線過敏症,光接触皮膚炎 |
(2)内因性光感受性物質,代謝異常 | ポルフィリン症,ペラグラ,ハルトナップ病 |
(3)DNA修復機序の異常 | 色素性乾皮症,Cockayne症候群 |
(4)メラニンの低下 | フェニルケトン尿症 |
(5)EBウイルス | 種痘様水疱症 |
(6)その他 | 日光蕁麻疹,慢性光線性皮膚炎,多形日光疹 |
◇薬剤性光線過敏症を診断する検査
内服照射試験 | 薬剤を服用後,皮膚に人工紫外線を照射。 |
光パッチテスト | 薬剤を皮膚に24~48時間貼布した後,その部分に紫外線を照射。 |
一般検査 | 末梢血管一般,肝機能,抗核抗体,抗DNA抗体,抗SS-A抗体などを,必要に応じて行う。 |
光線テスト | UVB,UVAの最少紅斑量(MED)測定。 |
◆光線過敏症の原因薬剤
光線過敏症の原因となる薬物は,多種多様にあります。光線過敏症の発現頻度は、薬疹全体の約14%を占め,内服によるものが発現頻度が高いとされています。特に成人の光線過敏症患者では,最初に疑うべき原因となっています。
<薬物カテゴリー> | <主な注意> |
ニューキノロン系抗菌薬 | ・特にピリドンカルボン酸系のもの ・光毒性,光アレルギー性反応 |
テトラサイクリン系抗生物質 | ・光毒性 |
解熱消炎鎮痛薬 (非ステロイド性消炎鎮痛薬) |
・オキシカム系,プロピオン酸系(ケトプロフェン,スプロフェン),ナブメトン ・ケトプロフェンは経皮吸収後,皮膚に長期に残存し,中止後数週間経ても皮膚炎を生じる。 |
血圧降下薬 | ・β遮断薬(塩酸チリソロール),降圧利尿薬,Ca拮抗薬,ACE阻害薬 |
糖尿病治療薬 | ・スルホニル尿素系血糖降下薬 ・光毒性,光アレルギー性反応 |
精神神経用薬 | ・光毒性,光アレルギー性反応 |
添加物 | ・メントールなどの局所刺激剤は,日焼け様症状を悪化させる。 ・オキシベンゾン・・・紫外線吸収 ・チメロサール・・・・・殺菌防腐剤,ワクチン類にも添加 |
サンスクリーン剤 | ・PABA,オキシベンゾン,シンナメート・・・化粧品,医薬部外品などに配合されているもの,光アレルギー性 |
上記以外に,抗悪性腫瘍薬,高脂血症治療薬,抗ヒスタミン薬,インターフェロン製剤,痛風・高尿酸血症治療薬,アルコールの多飲などがあります。 |
◇対策・治療例
原因物質を決定し除去する。
(1)遮光 | お薬を中止した後,約1週間は直射日光を避ける。(日焼けサロンの利用は,服用中避けること。) |
(2)全身療法 | 抗アレルギー薬,抗ヒスタミン薬,ひどいときはステロイド内服薬 |
(3)局所療法 | ステロイド外用薬 |
お心当たりのある方は,専門家(医師,歯科医師,薬剤師など)にご相談下さい。
参考文献 | ||
(1)日本薬剤師会雑誌 第55巻 第3号 | 日本薬剤師会 | |
(2)日本医薬品集2004年 DB | JAPIC | |
(3)日本医事新報 No.4028 | 日本医事新報社 | |
(4)今日の治療指針 2004年版 | 医学書院 | |
(5)薬局 第51巻 第4号 | じほう | |
(6)日本医師会雑誌 第128巻 第5号 | 日本医師会 |