スポーツ時や夏の猛暑,災害時,日常生活において,水の恩恵の多大なことは言うまでもありません。
厚生労働省は,今年6月に水道情報のページに平成18年版図で見る環境白書を新設しました。これは,子どもから高齢者までもが,健康でいるために水を飲み,熱中症や脳梗塞などの重大な事故から尊い人命を守ることを目的としたもので,具体的には,
- こまめに水を飲む習慣を定着
- 「運動中には水を飲まない」などの誤った常識をなくし,正しい健康情報をもつ
- 身近にある水の大切さを再認識
といったものです。
1.水分補給は,欠かさない
今年,気象庁は“エルニーニョ監視速報No.177-178”で,南米ペルー沖で海面水温が下がる“ラニーニャ現象”の発生による日本列島の気象変化を懸念しています。これは,日本列島に梅雨入りの遅れや猛暑などの異常気象をもたらすとされるものです。
(3)脱水(症)のタイプ
特に,高温環境下での肉体労働やスポーツ時などは,発汗による塩分喪失と鉄分のようなミネラル成分も喪失しますので,食事や飲料水で補給しましょう。
(4)熱中症とは?
熱中症は,環境温度の上昇で発生する健康障害で,軽症から重症まで様々な病態があります。
◇熱中症予防情報 環境省HP環境保健に関する調査・研究
2.飲料水について
夏場は,台風や雷で停電することがあり,断水に備えて水を汲み置きすることがあります。飲料水については,いざという時のために市販のミネラルウォーターを常備されていることでしょう。
しかし,洗濯や掃除などまでも利用するにはたくさんの水が必要になります。汲み置いた水に異常があれば,検査して原因を調べる必要が出てきます。近くで工事をしていたり災害のあった場合もご注意ください。
(1)飲料水の日常のトラブル
飲料水に着色や沈殿物はありませんか?また,飲料水水道の設備に使用する材料を心配したことはありませんか?
例えば,受水槽の材料は,FRP製,銅板製,ステンレス製,木製などがあります。そのうち,現在最も多く使用されているのはFRP製だそうです。給水管には,鉛管,銅管,硬質塩化ビニル管,ポリエチレン管,鋼管,ステンレス管を使用しています。貯水槽は,防錆と防食を目的に塗装しており,受水槽の内面塗装と外面塗装があります。内面塗装は,飲料水を入れるため特に限定されており,建築物衛生法では日本水道協会規格に適合した塗料を使用することになっています。
(2)飲料水の病原菌汚染水系感染(water-borne infection)
3.飲料水の知っ得情報あれこれ
日本の水道水質基準は,厚生労働省HP水道水質情報に公開しています。
(1)おいしい水の水質基準とは?
(2)日本の名水とは?
日本は,火山国であり火成岩の地層を通過する地下水の滞留時間が短く,ミネラルの少ない軟水が多いのに対して,ヨーロッパの地層は水成岩のため,地下滞留時間が長く,ミネラルを多く含む硬水が多くあります。
軟水と硬水を分けるには硬度を使います。これは,水1L中に含まれるCa+とMg+の合計量を数値化したものです(Ca量×2.5+Mg量×4.1の総和)。国によって表し方が違います。
硬度について世界保健機構(WHO)の飲料水水質ガイドラインでは,次のように分類しています。
硬水と軟水は,それぞれの特徴を生かして使い分けすると便利です。しかし硬水を飲むには,人によって苦味が気になることがあるので,軟水に慣れた日本人では,硬度100~150位から飲み始めるのが良いそうです。ただ気をつけたいのは,ミネラル補給としてバランス良い摂取が肝要で,虚血性心疾患の予防のためには,成人で食事中のCa(600mg/day)とMg(300mg/day)の摂取比率(2:1)が重要とされています。
特徴
(4)いざという時に備えておきたいミネラルウォター
水道管の破損や災害時,そして,運動時などに欠かせないのが,ミネラルウォーターです。ミネラルウォーターは,農林水産省ガイドラインによって,ナチュラルウォーター,ナチュラルミネラルウォーター,ミネラルウォーター,ボトルドウォーターの4種類に分けられています。
ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン 1990年制定 農林水産省店頭で見かけるナチュラルミネラルウォーター
ボトルドウォーターにはどんな種類があるの?
(社) 日本水道協会HP「安全でおいしい水道水推進運動」に,“おいしい水道水ボトルウォーター”を設置しており,全国の水道事業体でつくったボトルドウォーターを紹介しています。
(5)海洋深層水
海洋科学的にはグリーンランド沖の寒い海域で比重の高くなった海水が深層へ沈み,ゆっくりと南下して南大西洋,南極海,インド洋,太平洋へと約2,000年にわたり移動する海域をいいます。産業に利用する上で,つまり市販品として一般には,中深海水の水深200-300m以深の海水を海洋深層水といいます。市販品の中には,水深700m弱の深層水を利用しているものもあります。海洋深層水は,表層海水とは違い太陽光が届かず生物の生産がないため,富栄養性,清浄性,低水温性,水質安定性などの特性があります。
店頭で見かける海洋深層水
おわりに・・・
文献 | |||
(1) | 治療 安井昌之:水と微量元素:Vol.88 No.7 2006 | 南山堂 | |
(2) | 戸田細菌学 改訂33版 | 南山堂 | |
(3) | 詳解「学校環境衛生の基準」 | (財)日本学校保健会 | |
(4) | 一目でわかる水電解質 著者:飯野靖彦 | (株)メディカル・サイエンス・インターナショナル | |
(5) | 医科生理学展望 原書16版 | 丸善(株) | |
(6) | たしかな目 No.240 2006 | 国民生活センター | |
(7) | 厚生労働省HP(URL: ttp://www.mhlw.go.jp/) | ||
(8) | 環境省HP(URL: ttp://www.env.go.jp/) | ||
(9) | 道薬誌(北海道薬剤師会)2006年12月号 | ||
(10) | ファルマシア 高木邦明“海洋深層水の健康への効用と利用” | 日本薬学会 | |
(11) | 薬局 Vol.58 No.1 2007 | 南山堂 | |
(12) | 最新医学大辞典 第3版 | 医歯薬出版(株) | |
(13) | 今日の治療指針2006年版 | 医学書院 | |
(14) | Yahoo!Japan ショッピングなど商品関連サイト |