日本は、病気になっても誰もが安心して治療を受けられるよう医療保険(国民健康保険や社会保険など)に加入することになっています(国民皆保険制度)。しかし、バブル崩壊後は財政難の上、高齢者が急速に増加。総務省統計局によると、今年2月時点(総人口1億2771万6千人)で5人に1人が65歳以上です。徳島県は7月(推計)時点で4人に1人。国民医療費は増えて医療保険の財源はピンチ。患者さんの負担も増額。国は医療費を減らし財政と患者さんの負担を改善しなくてはなりません。その手段の一つが安い後発医薬品を使うこと。これは後発品とかジェネリック医薬品、GEともいいます。対意語の先発医薬品は新医薬品のこと。先発品や新薬、ブランド薬ともいいます。例えば、抗ウイルス薬アシクロビルで単純疱疹を治療する時。先発品のゾビラックスTM錠200は1錠284円90銭で、1回1錠を1日5回内服すると1日分が1424円50銭。後発品のクロベートTM錠200では1錠60円60銭なので1日分は303円と安くなります。
先発品の特許期間(特許法できめられたもの)と再審査期間が終わった後、他の製薬会社も厚生労働省(厚労省)へ申請し審査で認められると製造・販売できる処方薬(図)。有効成分や効能・効果が先発品と同じです。
特許法とは?
出典:日本製薬工業協会
まず、厚労省から製造・販売の許可をもらう条件と過程が違います。先発品の場合、製薬会社が有益な効果をもつ新成分を薬として開発するには数十年の歳月と百億以上のぼう大な費用がかかります。有効性と安全性を確かめるため、動物実験とヒトを対象にした臨床試験などの試験を重ねるのです。その結果を厚労省へ提出し審査で認められると製造開始。新薬の誕生です。厚労省が薬価基準制度により薬の価格をきめて告示(薬価収載)すると処方薬として販売開始。発売後も有効性と安全性を見直す再審査をします。新薬の開発中、製薬会社は特許を出願。出願してから20~25年の間、独占して製造・販売できます。特許権は新有効成分(物質特許)や有効成分の新しいつくり方(製法特許)などがあります。
一方の後発品は、通常、先発品の物質特許期間と再審査期間が終わった後、他の製薬会社が厚労省へ申請し審査で認められると製造・販売できます。一般に医療機関でよく使われる先発品ほど後発品は多く、例えば、高血圧症治療薬アムロジピンベシル酸塩では今年7月に34社から70品目が登場。先発品のノルバスクTM錠とアムロジンTM錠は国内で年間2000億円の売り上げを誇ります。開発の時間と費用(数千万円)は先発品よりも少なく、先発品の使用経験と副作用情報があるので有効性と安全性を確かめる臨床試験や薬物動態・薬理作用に関する試験をしません。乳化剤、保存剤などの医薬品添加物や製造方法は違うため、
内服薬が一定時間内に胃や腸で溶けるのか(溶出試験)
一定期間おいても品質が変わらないか
(安定性試験:加速試験、必要時に長期保存試験)
効果や副作用の出方(生物学的同等性試験)
などを試験して有効成分や効果が先発品と同じであることを確かめます。生物学的同等性試験は、健康な成人志願者20人以上に後発品と先発品を交互にのんでもらい血中濃度(時に尿検査)の変化に差がないか調べます。こうした試験結果を厚労省へ提出し審査を受けて許可をもらいます。
さて、後発品は先発品より開発費が少ないことから薬価が安く先発品の7割程度。先に薬価収載された後発品があると一番安い薬価になります。薬価は2年毎に見直される度たいてい値下がり。数年過ぎるともっと安い後発品が登場。しかし、先発品と差額が少ないと後発医薬品調剤加算や情報提供料などで医療費が増えたり、製剤に工夫をした後発品が先発品より高いことがあります。例えば、高脂血症治療薬メバロチンTM錠10(1錠124円40銭)。後発品のオリピスTM内服液10mgは1包157円30銭。こうなると経済メリットよりも治療効果やのみやすさ、品質のよさがポイント。
処方薬の薬価を調べるには?
今年4月から、患者さんが初めて先発品から後発品に変える時は処方せんが1ヶ月や3ヶ月など長期分であっても1週間分くらい試しに使えます(分割調剤)。処方医が処方せんに薬の名前を一般名称(成分名)で書き、後発品に関する欄に署名などがないと後発品へ変更できます。効果が出始めるまでの時間、効果が続く時間、効果の強さに先発品との違いがあるか、体に不都合な症状がないかをお薬手帳に記録しましょう。お薬手帳は調剤薬局でもらえます。昔は先発品の特許期限が切れると同時にゾロゾロと発売されたのでゾロなどと呼ばれ、安いだけで質の悪いイメージがありましたが、厚労省は1997年から審査条件を変えて見直しはじめ信頼できる後発品をめざしています。どの製薬会社の後発品を選ぶのかは薬剤師と相談し、信頼できる品質か、薬の情報はしっかりしているか、薬価や効果、製剤の特徴など先発品との違いについて説明を受けましょう。
- その他の経費
- 開発費
- 製造経費
(薬価:2008年4月収載分)
後発医薬品(ジェネリック医薬品Generic Drugs;GE)と上手に付き合おう
(徳島の生活情報誌“さらら” 徳島新聞社発行 2008年8月21日掲載)